『きつねの嫁入り』の由来とその諸説様々
空が晴れていて、日も照っている。
それなのに急な雨が降ってきて、急いで洗濯物を取り込んだ、という経験はありませんか?
この「天気雨」、地方によっては「きつねの嫁入り」ともいいます。
何故きつねの嫁入りというのでしょうか。
きつねの嫁入り、語源と由来
きつねの嫁入りとは「天気雨」のことを指しますが、他にも、日本各地に伝わる怪異現象のこともいいます。
その昔、昭和中期頃までは嫁入りする際には嫁入り行列をつくり、提灯の群れが無数に並んだ光景が見られたものでした。
この嫁入り行列の提灯の群れを思わせるように、夜間、遠くの山野に「きつね火」=「鬼火(火の玉)」がいくつも連なっていることを狐が嫁入りする提灯に見立てられ、「きつねの嫁入り」と言ったのです。
昼間の天気雨も、どこか異様な雰囲気があり、なにやらきつねに騙されているような気分になってしまいます。
そこで、暗夜の火の玉だけでなく、日が照っているのに雨がぱらつくことを、きつね火の怪しさに例えて、「きつねの嫁入り」というようになったといわれています。
たぬきも、人を騙すといわれてきましたが、「たぬきの嫁入り」では、異様な怪しさは出てきませんね。
諸説諸々
火の玉が嫁入り行列のように見えた不思議な現象が、同じく不思議な晴れの日のぱらつく雨をきつねの嫁入りと言われたことのほかにも諸説あります。
かつてキツネには妖怪のような不思議な力があるといわれていたことから、キツネの仕業と見なして「狐の嫁入り」と呼んだともいいます。
ほかにも、天気雨のときにはキツネの嫁入りが行なわれているとか、山のふもとは晴れていても山の上ばかり雨が降る天気雨が多いことから、山の上を行くキツネの行列を人目につかせないようにするため、キツネが雨を降らせたともいわれています。
いずれも昔話にありそうなお話ですが、めでたい日にもかかわらず涙をこぼす嫁もいたであろうことから、妙な天気である天気雨をこう呼んだともいうのです。
キツネの嫁入り=天気雨はそもそも何?
天気雨は、晴天にも関わらず雨が降っている状態です。
雨粒が地面に到達するまでに雨雲が消滅・移動した場合に発生します。また遠方で降った雨が強い横風に流されることで天気雨になることもあります。
特に山間部では、山越えの際に雲が消えてしまうので、山越えの風に雨粒だけが乗って飛んでくることになり、その場合、天気雨を見ることができます。必然的に日光が雨に当たりやすいため、通常の雨天よりも虹を観察できる可能性が高いといわれています。
いずれにせよ、何もないところから雨が降るのではなくて、やはり雨が降るには雲が必要です。
お天気雨も科学的に説明すれば、あるいは、予測も可能なのかもしれません。